私鉄線の駅の備え付けの灰皿の中でタバコの吸殻をおみくじがわりにした占いを生業とする通称灰皿猫の物語。
主人公の猫は、幼いころ、入れられた灰皿の中であまりのヤニくささに死に掛けたのをきっかけに占いの能力を開花させ、以後、灰皿に住み着き、客が10円を入れると客のその日の運勢にあったタバコの吸殻を出すという商売をしています。大吉なら安価で手に入りやすいタバコ、大凶ならめったに手に入らない洋モクといった具合。彼の夢はお金をためて猫たちの共同住居を建てること。そんな灰皿猫の日常を描いた一話完結形式のお話です。
愛らしい絵柄ですがなかなかに現実的な物語が展開されています。まあ作者の他の作品に比べシビアさは少なめですが。せちがらくきびしい世間とその中で育まれる暖かい交流と情がさらりと表現されています。灰皿猫の愛らしい風貌に達観した思考とたくましく生きる様が見所かと。灰皿猫の住処のような備え付けの灰皿って今でもあるのかなあ。
浪花愛
OUTコミックス全1巻/みのり書房
ジャンル:メルヘン・ドラマ/好み度:★★★★☆
[過去コメント]
そういえば、ああいうタイプの灰皿は、オームテロ以後片付けられてしまいましたね。(投稿者 itochan : 2005年12月05日 19:04)