黒い羊は迷わない 落合尚之

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人の心理を読み言葉によって操る能力を活かし、詐欺師をやっていた曜堂哲夫のもとに少女・湊が現れる。彼女は哲夫が昔解体したカルト教団の元信者で過去の出来事からカルト教団を襲う狼となっていた。なじみのカウンセラーの女性から少女を託された哲夫だが...。
主人公の哲夫は洗脳された精神を解体させる技術をもつデプログラマーという設定。超常能力ではなく、プロファイリングや心理カウンセラーのような、人の心理を熟知した技術屋ですね。1巻は、湊と哲夫の出会いと湊の過去への決別といったエピソードの中で人の心の弱さとか極限に置かれた人の心理描写とかが壮絶に描かれています。無条件に依存できる存在を求める者がそこから脱却する過程が見ごたえあります。ページ数の割りに内容がぎゅっと詰まっている傑作。
2巻は哲夫と湊がコンビを組み、解体の依頼で携わった事件を描いた物語。でも1つの依頼で終わっちゃってますが(笑)世紀末とかカルトブームでこういうタイプの人けっこういたのかなあ。自分は特別だと思いたいという。掘っても掘ってもきりがないような感覚を覚える心理描写はすごすきる...。現実と望みのせめぎあい、虚無に向かい合う心、ラストの演出も秀逸。
カルト宗教や暴力描写があるので万人向けではないですがしっかりとしたテーマに裏打ちされた緻密な構成で実に読み応えのある高水準な作品だと思います。

落合尚之
ヤングサンデーコミックス全2巻/小学館
ジャンル:カルト・ドラマ・アクション / 好み度:★★★★☆