デジャブ。・てのひら・リリウム・深淵・小春日和を収録したボーイズラブ短編集。
倒錯的な衝動に駆られた人間の心理描写が上手いですねえ。リアルっぽいけど嫌悪感は少ないのは作者の性別も関係してるのかも。「デジャブ。」や「てのひら」は特にそれを感じますね。
中年刑事と刑事の娘の同級生の中学生のお話「てのひら」の、理性と客観的な状況シュミレーションと性的衝動がせめぎ合っている描写は見事というしか。これだけだったらきっとヒいたと思いますが最後のオチが粋でまあいーんじゃないと思ってしまえる不思議さ(笑)
「深淵」は戦時中の前線真っ只中の兵卒のお話ですが、生きることがあやうい状況の追い詰められた人間の描写が秀逸。激しいものではなくどこか冷えた雰囲気があるところがよけい生々しさをかもしだしているというか。
「リリウム」はこども同士の遊戯を描いた他作品の続編。恋愛感情+思春期前の興味や快感のために戯れていた子供たち。一方(ウケくん)の体が大人に一歩近づいたらそれまでの戯れがこわくなってプラトニックになってしまったというオチが面白かったなあ。
「小春日和」は「恋姫」の後日談。本編はちと判りにくかったラストでしたがああ、おさまるとこにおさまったのねとわかってすっきりしました(笑)まあこの後日談もぼかした感じのラストですが。
※上記はビブロス版の収録作品の紹介。リブレ版では「深淵」「小春日和」のかわりに「恋愛歌劇場」「秋霖」が収録されています。
門地かおり
ビーボーイコミックス全1巻/リブレ出版
ジャンル:ボーイズラブ / 好み度:★★★★☆
2009年再販。収録作品はビブロス版なのでリブレ版とは微妙に違います。