カンタレラ 氷栗優

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イタリア・ルネッサンス期。チェザーレ・ボルシアの生涯を描く歴史ファンタジー。
毒薬と悪徳高きというイメージが強いボルシア家。度々フィクションの題材にもなっているその一族であり数奇で波乱、策謀の人生を送ったとされるチェザーレに焦点をあてた大河物語。
チェザーレは悪魔の契約により生された子であったり魔法使いが登場したり魔物などファンタジーな要素も加味されています。とはいえそれらはあくまで味付けであり、話の根幹は濃密な人間ドラマ。
フィクション要素もありますがほぼ史実に忠実な展開で、シリアスかつせつなくも痛々しい展開もままあり。タイトルのカンタレラは毒薬を示し、ボルシア家の秘薬でありチェザーレ自身でもありというところか。
出自と周囲の状況から生きるため狡猾にならざるを得なかったチェザーレ。いっそ自身をなくしたいという衝動や絶望にひしがれることもあるけれど、育ての母親や青年キアロといった彼にとって魔を払う光のごとくの人間との出会いなどで生き続けるわけで。
著者のもつ繊細な線と怜悧な絵柄は美麗なルネッサンス期の魅力を十二分に表現しているところがツボでした。チェザーレも美形で眼福(笑)
おおむね史実を知り悲劇な展開が苦手な人間なのですが、続きが読みたくなるのは著者の力量か。

氷栗優
プリンセスコミックス全12巻 / 秋田書店
ジャンル:少女・歴史ドラマ・ファンタジー / 好み度:★★★★☆