勉強にバイトに大忙しの奨学生のリーナ。ある日花畑の小さな椅子に座る幼女を拾う。そしてその幼女は普通の人には見えない妖精の子供であり幼女をきっかけに妖精たちの世界へ向かうことになる。
かなりはしょってます。異世界へ向かう際は、学校でトップ争いをする同級生のユリウスと幼女を迎えに来た青年といっしょなんで。妖精の幼女ミルッヒをめぐる冒険と主人公をはじめとする登場人物たちのドラマが主題。
物語のはじめの伏線やキャラの性格付けの理由が物語の中で自然に組まれていて登場人物すべてのドラマを丁寧に描く構成は見事というしか。物語の要である妖精ミルッヒが周囲の者の感情で成長するとか、主人公たちが転移した世界は人間の世界と同様、美しいばかりではない醜いばかりではないという、ファンタジーなんだけどリアルにも共通する設定がツボ。
また、優しくせつない登場人物たちの関係、緻密に組まれた構成、大事な存在を守りたいという願い、厳しい現実を前にしたときの揺れ動く心情描写が冴えています。
主人公側を襲う悪役すらも情の深い存在ってのがツボでしたねえ。どのキャラも本当の悪役がいないってのは好ましいんだけどその分せつないんですよねえ。どのキャラにも救いのあるラストが印象的でした。
ファンタジー冒険ものとしても人間の本質を描くドラマとしても秀逸なタイトル。
山口美由紀
白泉社文庫全2巻 /花とゆめ全5巻 / 白泉社
ジャンル:少女・ファンタジー・ドラマ / 好み度:★★★★★