滅日HOROBI たがみよしひさ

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古来「鬼」と称され人間の歴史から抹消された特殊能力を有する一族に絡む神と魔の伝奇アクション。
北鳳大学・呼野生物研究所のしがない研究助手・尼子全は毎夜夢を見る。それは予知夢だったのがある期を境にグロテスクな怪物のものになる。韋駄利の祠が事故で破壊された後で、その祠から出てきた三角縁神獣鏡を尼子と彼の同期の助手・相賀とが分け合って体内に吸収してしまう。
次々と現れる巨大な「怪獣」、相賀の父と彼らの勤める研究所の教授が在籍する組織SATORIとその対抗勢力たるYAMAKO。ホラー・古代ミステリー・超能力・特撮(?)などの要素をこれでもかと盛り込まれた濃密で大風呂敷な伝奇もの。一見まったく違う分野の要素をきちんと整理し違和感なくつなげています。主人公たちは巻き込まれた風ですが実は予定調和だったみたいな展開、お仕着せでない演出が見事。特に英雄を作るために悪役も同時に作るというあたりが妙に印象に残っています。政治とかでもけっこうあるよなあ。
その分説明的な台詞のページが多いのですがそのネームが実に興味をそそらせる内容なんですよね。またそれだけでなく、トレンディドラマ並の大人の恋愛・人間模様もさりげなく描かれているところは著者らしいです。
どれを書き出していいのかわからないくらい、作中のどんな些細なエピソードも物語の重要な部分であるような構成なんですよねー。半端ない情報量と入り組んだ内容なのですが整然として読みやすくかつキャラクターが生きている。壮大な与太話なんだけど人間の根幹をきっちりリアルに語る、そんな読み応えのあるタイトル。

たがみよしひさ
ぶんか社コミックス文庫全2巻 / ぶんか社
ジャンル:青年・アクション・オカルトミステリ / 好み度:★★★★☆