狸の混じりモノの一族の大学生の青年と、彼の一族が守護する一族の娘を取り巻く獣耳としっぽのファンタジードラマ。
優秀な兄と姉と妹にくらべ取り柄のない三流大学に在籍する青年は、亡くなった大伯父の跡を継ぎ、一族にとって重要な役割を担うことになる。それと同時に、自分の一族は狸の混じりモノの一族であることを知り、後に自分の役割とは
ある混じりモノの一族を保護することであることを知る。
厳格な祖父の命により骨董店に住むことになった主人公は、箱詰めにされていた獣の耳としっぽを持つ少女と出会う。その少女こそ主人公が守護する対象であるという。青年とミミつきの少女が徐々に打ち解けてゆき、少女が学校に通うようになると他の獣の一族との確執が表面化していく。
主人公の一族のあり方、なすべき役割、心のよりどころとなっていた人物が少女とゆかりの人物であったり、亡くなった大伯父の死の謎など、主人公のあずかりしらぬ事柄が次々と起こる展開ですが、逐一順序立てて明らかになってくるため混乱なく読みやすい構成になっています。
わりとあっけらかんとした主人公の性格、騒ぎ立てない純真な少女の気質のためかけっこうハードな設定と展開ながらどこか落ち着いた、ハートフルな雰囲気を醸し出しています。
獣耳だ尻尾だロリだという萌え要素はあるもののサービスとしての付加ではなく、物語の中核を担う重要な要素であるところが特徴か。可愛らしい絵柄でさりげなく読みやすい構図なのも好印象。
細かい話ですが、犯罪者をかぎ分ける能力に長けた刑事の兄、金の卵をかぎ分ける芸能プロ社員の姉、いい男をかぎ分ける妹という狸の嗅覚からきた設定がうまいなと思いました。他の一族の各々の獣の特徴を活かした設定も面白い。あと主人公がみそっかすな理由もね。
相川有
バーズコミックス全6巻 / 幻冬舎
ジャンル:青年・ファンタジー / 好み度:★★★★☆