鬼をテーマにしたオカルト、サスペンス系の物語を集めた作者の初期の作品集。
「鬼面児」は多分戦時中?の田舎を舞台に、病んだ人の心の闇を描いた物語。ホラーというよりサスペンス仕立ての作品で、人の心の弱い部分、怖い部分の描写が実に巧みに描かれていると思います。このころの作画は雰囲気があったなあ。幽霊等の不思議設定はなく、感情や、生い立ちによる異常性が恐怖の要素となっています。ラストの引きも印象深いものがありました。短編の映画を見ている感じでしたね。
「鬼魔」は鬼にまつわる3話構成のショートストーリー。「真夜中の童話」は「赤い靴」や「眠り姫」「白雪姫」といった童話のパロディショートストーリー。悲哀に満ちたシリアス、SFを混ぜたブラックユーモア、逆説的なコメディとバラエティに富んでいます。
同タイトルでウィングス文庫に再販されましたが、ペーパームーン版から再録されているのは「鬼面児」「鬼魔」のみ。文庫版に収録の作品、鬼魔(さよりの章)、獄炎堂の感想は別の記事にて。
楠桂
ウィングス文庫全1巻
収録作品:鬼魔/夢童/四十九日/鬼少年/鬼魔(さよりの章)/かくしんぼ/半蛇の女/隠/現世怪談/鬼面児/獄炎堂
ペーパームーン・コミックス全1巻/新書館(絶版)
収録作品:鬼面児/鬼魔/真夜中の童話他
ジャンル:ホラーサスペンス/好み度:★★★★★