Jの総て / ばら色の頬のころ 中村明日美子

Jの総て
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マリリンモンローに憧れるJの半生と恋愛を鮮烈に描いた物語。Jの生い立ちと寄宿学校での少年ポールとの出会い、そして学校を出奔しNYで歌手として生きる様子と、ポールとの再会。
1960年代のアメリカ。ゲイという言葉も一般的ではない時代。アメリカが戦争などで迷走していた頃でもあるのか。
Jはゲイというより性同一性障害に近いのかな。でも心が生粋の女の子というわけでもない印象もあるし、セクシャルボーダーが曖昧な存在。
Jと彼の取り巻く人々のドラマを通じて当時の世相も語られているような気がします。マイノリティな存在の糾弾と偏見と攻撃の容赦のなさといったら。作風はJUNEっぽいといったらいいかな。耽美と芸術系エロティシズム色の濃い絵柄。キャラの心情描写も会話も当時の洋画を見ているような魅惑と廃頽の雰囲気をかもし出しています。
印象に残ったのはJをはじめとしてメインの登場人物がどこまでも純粋なところ。情が深すぎて苦しくせつなくていとおしい。
あー上の文章を読んでもなんのことやらわからないなあ;うまくまとめられなくてくやしい;とにかく傑作です。

ばら色の頬のころ
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Jの総ての前日談と後日談。モーガンとポールに焦点をあてた物語。やっぱりJの総てから読んだほうがいいかなー。こちらのコンビもけっこう興味深い二人でした。萌えとか抜きで。
父親との確執とか力を持つ人間の横暴さとか、思春期の純粋な子供の視点からの描写がすさまじかった。そして時が過ぎたころの父と子の姿との対比も。

中村明日美子
Jの総て / FXコミックス全3巻 / 太田出版
ばら色の頬のころ / FXコミックス全1巻 / 太田出版
ジャンル:BL・青年・レトロドラマ / 好み度:★★★★★