シスタージェネレーター 沙村広明

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久誓院家最大のショウ・制服は脱がない・ブリギッドの晩餐・シズルキネマ・下層戦略鏡打ち・青春じゃんじゃかじゃかじゃか・エメラルドを収録した著者の短編集。
「久誓院家最大のショウ」
存在感の強い美人女子高校生が主人公。母親は他界、基本穏やかな気質だが常に娘の姿をカメラに残そうとする父親と同居。そんな中、ある頃から家に入った美人ハウスキーパーと父親との仲を懸念する主人公だが。
ぶっちゃけテーマはSMです。遊戯ではなく生活に根付いたSとMの関係つーか。そこに確かに愛はあるというか。江戸川乱歩の世界に近い雰囲気。
親夫婦のなれそめとその関係と親子愛、そしてハウスキーパーの本当の立ち位置など、全容が明らかになったときの主人公の心情と限られた時の経緯の演出が印象的でした。オチも素晴らしい。あの墓石はありえんが。
「制服は脱がない」
女子高生2人ないし3人が世情や時事をうだうだと語る一発ネタ系短編。けっこう的を射てます。食品添加物とか韓流とかけっこう多種多彩。韓流に関しては激しく同意(笑)
ブリギッドの晩餐
飢えた幼い兄妹。妹は人買いに拾われ大金持ちに買われる。そして彼女は当主の妹として彼と食事をすることを依頼されるが・・。ブラッドハーレーの馬車に近い世界観か。彼女たちの境遇に対し当人たちと傍観者である読み手との認識の差異。主人公のおなかいっぱい食べられて幸せだったという台詞にそれが込められているような気が。
「シズルキネマ」
売れない漫画家と同居人である女子中学生のお話。平成が舞台なのにどことなく昭和のに匂いがするなあと思ったらそういうオチっすか。ひやしあめのパッケージネタはあちこちで見られるなあ。関西に住んでいますが見たことがない。
「下層戦略鏡打ち」
麻雀短編。勢いだけで描いたというかんじがしないでもない(麻雀はよく知らないので適当な印象)。
「青春じゃんじゃかじゃんじゃか」
惚れられ思いのたけを歌に託したテープを渡された女子の話。もはや都市伝説級のアプローチだなあ。テープの内容も笑えるけど妙に冷静に評価する主人公にも受けた。ラスト、年月がたった主人公が裸だったのが意味不明。急しつらえだったから?
「エメラルド」
西部劇の話。ガンアクションのみならず緻密に組まれた構成の秀作。可憐な少女と悪者の賭けのシーンと力を持たぬ者の処世術の訓示が好きでした。

沙村広明
アフタヌーンコミックス全1巻 / 講談社
ジャンル:青年 / 好み度:★★★★★