平凡で内気な女子高生琉花は、ある奇妙な事件をきっかけに、女性が男性を支配する異世界へと迷い込む。
いわゆる異世界転移ファンタジー。舞台となる異世界は西欧中世ファンタジーのような世界観で、女性が世界を動かし、男性はその奴隷として働くという社会構造になっているところが特徴。
主人公が異世界へと迷うきっかけとなった事件もこの異世界に関連したことで、主人公には異世界にとって重要な存在の人格がいるという設定です。とまどいつつも状況になじみ自分のなすべきことを知っていくという過程は王道ながらわりとどんでん返しが多くどうなるんだろう、と思わせる吸引力がありました。
主人公に敵対の立ち位置なのは現女王なわけですがこれがけっこう複雑だし、主人公の相手となる男性キャラも複雑怪奇。一辺倒な物語構成じゃないあたりが魅力でした。
現女王の微妙な立場や主人公に対する複雑な心の内をはじめとした登場人物たちのさまざまな心情描写、不安定な情勢での政治的経緯や人心の変化の描写が緻密で秀逸。もちろん主人公の恋愛模様も見ごたえあり。
耽美系の絵ながら写実系ともとれるし画面が整理されています。ファンタジー系は装飾の量からどうしてもごちゃっとしすぎなのですがこのタイトルはそうでもなく読みやすかったです。ただたまに出る投身の低いコメディ絵はこのタイトルではちと違和感があったかなあ。
途中はいい意味でどんでん返しが多く読ませる内容だった割にラストがちょっとありきたりだったかなあ。まあハッピーエンドだったからいいのか。どうも担当さんの意向のようで、著者は違うラストを想定していたそうです。
業界にはよくあることとはいえ著者のラストも見てみたかった。
さちみりほ
プリンセスコミックス全10巻 / 秋田書店
ジャンル:少女・ファンタジー / 好み度:★★★☆☆