15の春 ほか青年漫画9件 

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)
荒木 飛呂彦
A4版上製フルカラーという画集みたいな装丁のタイトル。企画による漫画のよう?青年漫画家が墨一色で描かれた絵を巡りルーブル美術館へ赴くという内容、でいいんだよね。フルカラー漫画なのに話の肝が黒一色の絵というセンスが素晴らしい。著者の絵はやはりこれぐらい大きい版のほうが映えるなあとも。★★★★☆

15の春 (ジャンプコミックスデラックス)
荻野 真
偉人や傑物は生まれたときからそうではなかった。彼らがそうなるきっかけとなるドラマを描いたオムニパス。空海・信長・ダーウィンなど5編。題名通り15歳ごろの偉人たちの逸話がテーマ。昔はその年齢あたりが子供から成人になる境目だったからというのもあるんだろうな。史実そのままというわけではなくかなり脚色を加えた内容。妙にエロを含めたコメディタッチな印象が強い話が多め。最後の話はほとんどファンタジー。脚色にも元ネタがあるみたい。各話のちょっとした著者のコメントが妙に印象に残っている。★★★☆☆

絶対服従お嬢様 (ヤングキングコミックス)
七竈 アンノ
平穏な日常を望むものの両親の借金のため女王様なお嬢様の下僕となった少年の話。腹に爆弾を仕込まれその起爆スイッチを持つお嬢さまの無慈悲な命令に従うはめにという展開。惑う主人公を見て歓喜に咽ぶお嬢様の表情、主人公の受難ぷりは目をそむけたくなるものの話のまとめ方がじんわりとくる話で。個性的すぎる脇役の登場、無茶な主従の中で描写される主人公の心情、お嬢様の行動の所以、とことん灰汁が強すぎる内容ながら読み終えてみると人物描写の深さがうかがえる話だったという。欲を言えばもう1巻分くらいの尺できちんと描いてほしい部分があったかな。★★★☆☆

まんがのCOCOはキケンなつぼみ! (フレックスコミックス)
長谷川 裕一/ 徳冨 数志
素人漫画制作を基軸とした青春もの。漫画作品を仕上げるスキルはある主人公とまったくの素人の少女。それまで歩んできた道に迷いが生じ休養していたが漫画制作に多大なる興味を示した少女に主人公が関わる。漫画制作の技術の話であり、漫画大会を目指す学園ものであり、ハーレムものでもある内容。漫画制作ものとしては切り口が面白く、漫画大会におけるお題も興味深い。

地方食ぶらり旅 駅前グルメの歩き方 (KCデラックス)
森田 信吾
2005年発行タイトルを題名を変えての再販らしい。小説家とその担当が、地方の駅前周辺の取材で立ち寄った店で食事をする話。グルメ一色というわけでなく、その街自体を描写の後、観光目的の名物料理でなく地元の人が「常食」としているメニューを食べるという内容。富士宮焼きそばの話もあった。初刊発売当時はB-1はまだなかったんだろうな。いや紹介に大会云々がなかったから。他の焼きそばと微妙に違うのは調理法が違うからというのをこの本を読んで知った。読み応えがあり堅実な内容のタイトルだった。

Rusty Bloom~ラスティブルーム~(CR コミックス)
こよかよしの
腐食した金属に咲き謎の病原菌の発生源となる錆花を巡るファンタジーアクション。花の駆除と治療を行う看護婦はある集落で一人の少女と出会う。女子二人のバディものであり、本筋の他父親探しというファクターも加えた内容。設定はものすごく好みだし興味をそそる内容なんだけど、微妙にとっつきにくい構成というか読み進めづらかったのが残念なところ。

ぼくはツアコン ぼくはツアーコンダクター (IKKIコミックス)
とんだばやしロンゲ
母に偶然会えることを期待しバスのツアーコンダクターとして働いている4歳男児を主人公にしたシュールナンセンスギャグ。4歳なのにどうして働けるのかとかツアコンが勤まるのかとか深いことは考えちゃダメ。練られているなと感じるギャグ構成、方向性も明確なタイトルだと思います。が、哀愁の漂いっぷりが半端なく、ギャグの方向性が痛辛くいたたまれない。作品の個性と見所が楽しめず流し読み。根本的に著者の感性とは合わなかった。ごめん。昭和の濃い少年ギャグ漫画が好きだった人には楽しめそうではありそう。ちなみに衝撃のラストでしたが続刊も出るようで、主人公は舞台を変えてツアーコンダクターを続けている模様。

いくさの子~織田三郎信長伝 (ゼノンコミックス)
原 哲夫,北原 星望
織田信長の話。本能寺の変のオープニングから、吉法師という名だった10代のころに話が移る。題名通り戦の中で生まれ戦の中で死んだ信長伝。風来坊ないでたちに破天荒で周囲にとって考えも及ばない行動に出る聡明な信長像が巧い。著者らしい脚色も健在です。

1984SWEET MEMORIES
古泉 智浩
題名とおり1984年から数年のバブル期を舞台に、VHSとベータや阪神優勝やキツネ目の男など当時のトレンド要素を加味しつつ、エロが一番大事なタイプの男性どもと達観した女性たちによるしょっぱいナンセンスコメディ。その時代の回顧録的な話かと思ったが、いやそうでもあるのだが、予想の斜め上をいくグダグダで人生無駄遣いしてるなと感じる面々の日常の話だった。巻末には現代からタイムスリップした人物を主人公にした話も。正直ため息をついてしまう内容だがこの時代が青春だった人には癖になるタイトルかもしれない。多分。★★★☆☆