小学生の少年は自分がやりたいことを見つけられずにいた中、日課のようになっていた目的地も決めず自転車を走らせていたところ、私有地の先に奇妙な塔を見つける。そこは、魔法使いである少年の祖父の幽霊が使い魔とともに暮らしていた。少年は塔に出入りするようになり己の世界に広がりを感じ、塔に行かせまいとする家族を説き伏せ塔で暮らすことになる。
同名小説のコミカライズ。現代社会が舞台だが魔法も存在する世界観。
小学生の学習雑誌に載ってそうな内容だなあと思ったら原作は本当にそうだった。ファンタジーな設定はあるけれど、主人公の葛藤も心情も家族の主人公に対する言動も、物語の根幹であろう人間描写はいい意味でリアルで、物語がなんの抵抗もなくすとんと心に入ってくる。主人公の年頃のこどもから見る大人の言動が見所と思われる。
祖父とは真逆の気質で祖父に反発して出奔した父は主人公の行動を頭ごなしに否定し、優秀なブラコン(笑)の弟も兄を塔へ行かせまいとするとか、あるある的な目で見てしまった。じいちゃんの年の功とか主人公の塔の生活においての生き生きっぷりとか、印象的な展開が多かった。地味におすすめしたいタイトル。
原作:香月日輪 / 漫画:亜円堂
怪コミックス全3巻 / 角川書店
ジャンル:少年・ドラマ / 好み度:★★★★☆