表題作ほか君まであとどれくらい・おぼつかない恋のゆくえは・いじっぱりが素直になるには・僕らの恋は・愛犬家の昼・愛犬家の朝を収録したBL短編集。
いっそキミに飼われたい
会社員の藍人は、行きつけの蕎麦屋で度々自分の天そばを凝視する大学生小町と合席をしたことから知り合いになり、以後小町を愛玩動物に持つような親しみで接していたが、ひょんなことから食われてしまいという話。
向かい合って海老天をやりとりするけど恋人同士ではないというナレーションからはじまるのがなんか新鮮だったかも。主観は藍人で、当人は恋愛感情がなかったけど相手には実はありました、みたいなシチュエーション。両思いに至る過程もその後のHも主題からブレない展開が良。
君まであとどれくらい
同じ陸上部同士だった二人の話。大学浪人が決まってしまった三村は高校在学中にずっと好きだった四季と再会し怪我をさせてしまったことから四季の引越しの手伝いをすることになるが。ツンな受けとちょい朴念仁ぽい攻のやりとりが好み。四季は傍から見るとこれでもかというラブ態度なんだけど三村は気がつかないという。なんのかのとかわいらしいふたりです。
おぼつかない恋のゆくえは
革製品の修理屋の岡島に告白され、岡島をよく知らないまま付き合うことを承諾した渥美の話。偶然にも同じマンションの隣同士で、それがわかったのが岡島が部屋の仕切り板をぶちやぶってというところが面白かった。
渥美のキャラが珍しかったかな。疑り深いというか他者が一定距離以上に近づくとかなり警戒するのはともかく一応付き合うと承諾してる相手なのに。渥美のモノローグは正直、後ろ向き過ぎるというかそういう方向に思考が走るのかと驚くことしきり。だがそこがいい(笑)そういう壁を作ってる渥美が物おじない岡島に心を許していく過程が見所のようです。岡島の笑顔も印象的。
いじっぱりが素直になるには
大学生の悠二は、10年以上片思いの初恋の相手である床屋の息子の茂久と再会する。悠二は再会できて本当はうれしかったけど昔から茂久相手にずっと悪態をつき続けていたためその癖が直らず素直になれず、というジリジリシチュエーション。幼少時の悠二の悪態はどうなんだと思うところもあるけど可愛いです。
僕らの恋は
大学入学を機にある下宿に住むことになったものの不安だらけの芹沢だが、下宿に入ったときに向かいの部屋の五十嵐がちぎって散らした絵の色に元気付けられる。五十嵐には初対面で睨まれたが、後に彼にそのことを告げたことから彼らの距離は縮まる。ちょっぴりせつない展開かなと思ったけどふたを開けてみるとハートフルな話でした。
短編ですがきちんと話が組まれているし、片方が性格に一癖あるタイプが多いけどその設定をうまく活かした展開、するりとキャラに移入できる読みやすくほっこりする内容でした。
内田つち
あすかコミックスCL-DX全1巻 / 角川書店
ジャンル:ボーイズラブ / 好み度:★★★☆☆