「へび苺の缶詰」「空の箱庭」「ウタカタンス'96」「あさにかえる」「僕ノ庭」を収録した大人の恋の物語。
「へび苺の缶詰」
後の「空の箱庭」の続編。同じ世界観ながら関連性は薄いかな。絵柄が変わっているので続編だとしばらく気がつきませんでした;
土砂降りの雨の日、4歳の息子は父親と2人でお留守番。そんな中、縁側から奇妙な青年が家に入ってくる。彼は父親の後輩だった。2人の関係と来客の意図が徐々にわかる構成。回想を通して2人の絆やドラマが描かれています。劇的じゃないけど心に染みる演出。
「空の箱庭」
3篇の短編で構成された物語。
7年間付き合っていた彼氏に出て行かれた女性は、女友達の薦めで彼女の家に居候することに。ところがその女友達は同居人が面倒を見るとだけ告げ出かけてしまう。その同居人とは女友達の親戚の青年だった。
奇妙な同居生活で始まるお話。当初女性の視点の話かと思ったら青年側の話になり2つの点が1本の線につながるという構成。ちょっとミステリ仕立てっぽいかな。大人ゆえの複雑な事情とそれに伴う心理描写になんとなくリアリティを感じたり。人物たちの間に漂うちょっとだけグダグダな雰囲気と、舞台となる海辺の家周辺の空気感の混ざり具合が絶妙。
「ウタカタンス'96」
高校生のお話。山田君は女子思春期の不安定であやふやな心情描写が印象的でした。96年ごろの流行というか風俗が、ちりばめられているのですが今見るとくすぐったい気持ちになるのはなぜなんだろう。
「あさにかえる」
とある始発電車内のお話。他人が乗りあう特殊な空間の独特の空気とそれを払拭するオチが見事。叙情的というか芸術的っぽさを感じた短編。
「僕ノ庭」
空の箱庭の後日談みたいな内容。子供の視点が新鮮。
河内遙
Feelコミックス全1巻 / 祥伝社
ジャンル:女性・恋愛 / 好み度:★★★☆☆