人間と魔法を使うねずみが戦いを続けている世界。王の七勇者の一人、パイ・ヤンは勇者であるが故戦いに駆り出されなかなか家に帰れずにいたところやっと暇をもらい家に帰ってみると、家はねずみに襲われた後であり息子はさらわれており、息子の日記から妻はそれ以前に男と家を出ていたことを知る。息子の飼い猫であったとらじは猫mixにされており、唯一の手がかりであるとらじを連れて息子を探す旅に出る・・という展開。
猫mixとはねずみの魔法で、人間に変化した猫のことを言う。人間並の知能と2足歩行になるが姿は獣人といったところか。
1,2話はある程度旅が続けられている頃の旅のエピソードで、時系列的には3話目が最初の話になり、2人が旅に出ている理由もろもろが回想という形で展開されています。1,2話のわりと育ったとらじにくらべ、3話以降は生まれたてのこどものようで幼児と新米パパの奮戦記なところが妙に印象に残ったり。
パイ・ヤンは勇者だけど戦うだけに能があり、離れていても家族はずっと自分を愛し続けてくれていると思い込んでいたという・・女性から見るとなんと間抜けで愚かで哀しいことか。悪徳業者?にだまされて送ったものが届いてない不運もあるけど、手紙だけ送って家族が満足してると思っている段階でだめだろううと。
幼児そのもののとらじとともに旅をすることで擬似育児体験をすることになるパイ・ヤンの奮戦振りにもなんか涙が。まあ実際体験することで自分がどれだけ家族のために何もしていなかったのか実感するところは馬鹿ではないのですが。
境遇は現実社会でも見られる光景かなあ。単身赴任で仕事一番、やっと休みがとれ帰ってみると旦那に愛想をつかした妻は家を出ており残った子供を一人で育てるやもめ亭主といったところか。
身近なネタをうまくファンタジーと融合させたり、核となるキャラクターのつくりこみ、先がどうなるか気になる伏線をはっていたりと、作者の実力を感じる、読み応えのあるタイトル。
個人的に気になる伏線は、ねずみがこどもたちをあつめているというところと、とらじが旅の中で人間になりたいと感じているところかな。後者はパイ・ヤンの息子と絡みそうでなかなか複雑になりそうな予感が。
田村由美
フラワーコミックス・フラワーコミックスα 1~/小学館
ジャンル:少女・ファンタジードラマ / 好み度:★★★★★