ある王国を舞台にした王位継承者とその影武者を巡る人間ドラマ。
ある王国の王室には、王位継承者には影武者を持つしきたりがある。影武者がいかなる者かというのは、冒頭の、遠征の際の父王の負傷に伴い影武者が先陣に立ち事なきを得たというエピソードで伝える。
王は戦の傷から先が長くないことを知り、王子の誕生とともに王位継承権を剥奪した2人の王女の剥奪していた王位継承権を復活させたことに伴い、王子を含め3人の影武者が作られることになる。
第二王女の影武者は、彼女が親しかった青年が探すことになり、彼は芝居小屋の役者をしていた少年を見つける。少年は気が進まないが飴と鞭で断れる状況ではなく影武者を勤めることになる。元役者ということもあり語学も堪能で影武者としてはそつなくこなす。王の没後まだ少年の王子が王を継ぐことになるが、様々な策謀も始まっていた。
先王と過去の王妃達と王の影武者、第二王女と世話役と影武者の青年、王妃、第一王女、王子とその影武者と代々王に仕えるもう一つの存在など。登場人物は多いがその立ち位置と相関がきちんと組まれているし、どの登場人物の描写にも手を抜いていないおかげで、混乱することなく物語に没頭できる。少女漫画というとこういう舞台でも恋愛方面に行くパターンが多いがこちらは王位継承を巡る人間ドラマに重きを置いているのかかなり骨太な構成になっている。
あと影武者の役割を終えた者の待遇の事実は、主人公がちらりと懸念したことそのままであるがこのことも物語の大事な鍵の1つなのだろう。憎悪、復讐、罠、欲望、決意・・・様々な思いが交錯する秀逸な人間ドラマを予感させる。
びっけ
KCx(ITANコミックス)全9巻 / 講談社
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★☆