EPITAPH(エピタフ) 硝音あや

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死者の遺言を届ける「死天使」として任務を遂行する十和とアスタルテの物語。
死天使という呼び名ですが主人公の2人は人間の少女で葬儀屋の遺言執行人。死天使は死者が望んだ遺族に遺言状を渡しその内容を伝えること。
彼女たちが所属する民間の葬儀屋・鎮魂協会の業務は死者の遺言をいかなる手段を用いても執行するというもので、たとえば遺産を特定の人間に渡す旨の遺言ならば、他の遺族が文句を言っても協会がそれを阻止するというわけで。
死者を食い物にしているというイメージがあるのか、少女たちは一般人には偏見の目で見られています。死天使の成り手が少なく、職業選択の幅が極めて少ない身寄りのない少女が自然とその職につく、ということらしいです。
過酷な状況のなか寄り添う2人の少女という状況のための設定だと思うのですが。味付けによってはどのジャンルでもいけそうな設定だなと思ったり。
秀逸な設定だと思うのですが、その説明が少々とっつきにくくて読み手によっては主人公たちの状況が把握しずらくなっているのが残念。
表紙のコピーにゴシックロマンスとあるとおり、謎めいた可憐な雰囲気の物語。
仕事の過程や日常の生活で生まれる、勝気で聡明なアーシェと純朴で不器用なタイプの十和のふれあいがメインですが、依頼人のドラマも丁寧に作られています。
十和は家族の記憶がなく病院にいたところにアーシェが迎えにきたという過去がありアーシェはなにかしら十和に思い入れがあるようです。十和は病院でアーシェと初めて会ったと思っているようですがそうではない模様。
アーシェが探す茨の魔女、2人の過去といったあたりが物語の伏線のようで、どういう展開になるのか気になるところ。キャラクターの魅力だけではなくストーリーもしっかり作りこまれているので、世界観を理解できれば百合ファン以外の人にも楽しめる内容かと。

硝音あや
百合姫コミックス1巻 / 一迅社
ジャンル:百合・ドラマ / 好み度:★★★★☆

余談ですが装丁が割と凝っています。こういう装丁はバブル期の同人誌によく見られました。懐かしい。