千年万年りんごの子 田中相

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青年は寺の前に捨てられた子だった主人公。養父母はよくしてくれたし大学も出してくれたが家を出たがっていた。そして婿を希望するりんご農家に入婿になる。相手の女性は朗らかで優しい気質、結婚もつつがなく行われた。自分を知らぬ土地で穏やかに暮らしていくと思っていた。
しかし妻が熱を出し、目にとまったりんごをすり下ろして与える。妻は回復したがそのりんごを食したことにより、神の妻になってしまう。つまるところ昔の風習であった不作の時のための神への生贄となったということ。それは形式的な儀式ではなく、神の妻は神がかり的な力で人間ではなくなるので、本当にほどなくして青年は妻と離ればなれになってしまうということがわかる。
現在では昔のように生贄は行わなくなったし青年は家に入ったばかりでその儀式のことを告げる前に(というか告げるつもりもなかっただろうが)、事が起こってしまったというわけ。
それまで何一つ自分のために追い求めることをしなかった主人公は妻を失わないために積極的に行動に出る、という展開。果たして神がかり的なことを回避出来るのかとか、徐々に変化していく妻との交流とかが主題になっていく模様。主人公が習わしの当事者であると同時に余所の人間でもあるというところがミソなのかもしれない。

田中相
ITANコミックス全3巻 / 講談社
ジャンル:少女・ドラマ・ファンタジー / 好み度:★★★★★

ファンタジー系の設定が今ひとつピンとこないという人は完治が見込めない病と見ればあらゆる可能性に賭けての主人公の行動や心情はくみ取りやすいのではなかろうか。