ものものじま 野村宗弘

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日本のどこかにある過疎化が進む離島。島の住人たちは、代々各々の家系が受け継ぐ特殊能力と稼業で生計を立てている。住人のちょっと不思議なものづくりの工程や島の風俗や文化を描いたシュールナンセンスコメディ。
とろける鉄工所の著者の新作シリーズ。このタイトルもものづくりがテーマですが、ちょっと変わった内容。
過疎が進む離島、各々の稼業で生計を立てる住人。商品自体はよく見かける雑貨や食べ物なのですが、現実ではありえない珍妙な製作過程で、しかも代々特定の家系に受け継がれる特殊能力を使って作られるというのが見所のタイトル。
作中に登場するフィクションものづくり過程は、想像力豊かで感受性の高い幼い子供の想像の産物のようなイメージがあります。
主人公は「小間使い屋」の長男。小間使い屋というのはほかの仕事の手伝いをする職業で、素人の人間が玄人仕事を手伝うため、物をガン見するとその物の製作工程が見えるという特殊能力「コマズアイ」を持っています。父親の仕事を手伝う主人公の視点から住人のものづくりの工程を描くという構成。
設定はコメディらしいフィクションですが、作中描かれる人間模様や田舎事情はけっこうリアリティがあります。
稼業を継げという親のプレッシャーに反発したくなる主人公とか、子の幸せを願い継がなくてもいいと言う祖父の言葉に胸を打たれる少女とか。自営業の家に生まれた人だと共感する人がけっこういそう。
過疎をとめるため公共電波で都会を罪悪と教える設定とか主人公のお花畑な父親とか電波な妹の設定とかどころどころブラック系なノリも織り込まれているあたりも特徴か。さりげに黒かったり阿鼻叫喚なシーンもあっても牧歌的な雰囲気がくずれていないあたりは著者のカラーなのか。
主人公の思春期らしいエロ妄想は、大人から見ると可愛らしいというかノスタルジイを感じる(笑)主人公はその特殊能力からさまざまな職業を見ながら、自分の道を選び取っていくというオチになりそうななさそうな。

野村宗弘
ビッグスピリッツコミックススペシャル全3巻 / 小学館
ジャンル:青年・コメディ / 好み度:★★★★★