先天的に天使の声を持つ少年たちが集められた寄宿舎。彼らの声が本当の才能を開花させたとき多大なる名誉と死が与えられる。各々の事情と様々な想いが交錯する少年たちの物語。
70年代ギムナジウムものを彷彿とさせる舞台設定。美しい声を才能とした少年たちが集められた寄宿舎が舞台でいわゆる合唱団の寄宿舎とも言える。だがただ声が美しいだけでなく、声の美しさがある極みに到達すると神に選ばれた「天使」となり遠からず死を迎えるという設定がある。それはとても名誉なこととされているのがミソか。
合唱団に入る少年たちはみななにかしらの事情があり、家庭の金銭事情のためだったり才能を試すためだったり。それゆえに発生する少年たちのドラマ、そしておそらくは題名にある通り、母親が何かしらの形で彼らの心に深く根付いているようでそれが主題となっている模様。彼らが知り受ける真実を昇華して自分を進める方向を定める過程も見どころなのだろう。
美しくもあり哀しくもあり、概念的というか純文学的な作風は昨今あまり見られないゆえか、共感はしにくいものの引きこまれていく話なのは確か。
売野機子
バンチコミックス全6巻 / 新潮社
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★☆