主人公の青年はいわゆるヤクザの構成員。組が経営するクラブとバーを任されおり一般の雇われ経営者のような仕事についている。トラブルが起こっても組員を呼ばないのは、ヤクザ稼業と深くかかわりたくないからだった。というのも、彼が構成員となったのは、自分の意志ではなく、学生時代のバイト先が組の経営の店で、知らず薬の受け渡しを頼まれ行ったから。
そんな中、所属する組は抗争があり、その殺しの依頼がらみの行き違いで民間軍事会社のメンバーによる組への報復に巻き込まれるという展開。
主人公巻き込まれ型バイオレンスもの。物理的にも精神的にも一方的にやってくる暴力がテーマか。
自分の意志とは関係なく周囲の状況に飲み込まれていく主人公を中心に、主人公と行動を共にする、生きる理由を探す寡黙な裏の人間、主人公がヤクザであると知らされていなかった主人公の彼女などを巻き込んで話は展開されていきます。
事態が、単純にヤクザの抗争、というのではなく戦闘のプロを手前勝手な理由で滅しようとして逆鱗に触れたというひねりのある設定がうまい。
いくつもの小さな要素と複数の人物をかみ合わせて大きな流れを作る構成、事態の描写とそれに伴う人物の行動と心理描写が見事。
アクション描写は効果線をほとんど使わないとまったような絵面なのに躍動感があり、静的な表現ゆえにか暴力の理不尽さが際だって伝えられている印象を受けました。
暴力シーンが多いので苦手な人がだめかもですが、先の展開がどうなるかとても気になる構成だし人間描写がずば抜けてうまいのでお勧めしたいタイトル。
個人的に印象に残ったのは、高校時代、主人公は集団いじめの加害側で主人公自身は率先していじめていないのにいじめられた側にロックオンされた過去のエピソードでした。今も昔も状況に流されただけで自分が望んではいないし積極的にやっていないのにこの理不尽、というのが主人公の心持ちなんでしょうが自業自得な面もあると思うなあ・・。
室井大資
ビームコミックス全2巻 / エンターブレイン
ジャンル:青年・バイオレンス・ドラマ / 好み度:★★★★★