王様と魔女・逃亡前夜・夜のおばけ・山響呼・夜店を収録した叙情ファンタジーストーリー作品集。
王様と魔女は、鳥の姿の王様と少女の魔女の話。中世ファンタジー系世界観。魔女は代々脈々と記憶と知識を受け継いでいるという設定。主人公の少女の魔女は退位間近の王様に呼ばれ、先代の魔女が王様にかけた魔法を解いて欲しいと言われる。自由に跳びたくて鳥になったのに王座に残る王様と先代の魔女から記憶を受け継いでいない魔女。双方の視点と思いを綴る話、かな。
逃亡前夜は吸血鬼の姫の話。敵であるハンターの青年を伴侶にした姫に激高する同族の少女。変わらない心、変わる心、変わりたくない心。過去自分が言ったことを時を経て他者に言われる妙。協力者の地位の高い男性の役どころと血を座れたハンター眠りっぱなしだったのが印象的だった。なんかテンプレとズレてて面白かったというか。
夜のおばけは、良い子にしないとおばけが来るという祖父の言葉に囚われていた少年の話、かな。こどもの成長ってか一皮剥ける話というべきか。
山響呼は、長く長く生きる山響呼という存在と少女の話。生と死とそれに立ち会う人間の思いの話、かな。
どの話も登場人物の内面描写とか独白とか思考を叙情的に深く掘り下げて描く構成に加えエピソードなど見せ場の手数が多く、読み応えがある。のだが奥が深く読み解くのがものすごく難しい作品集でもあった。なので素っ頓狂な感想というか紹介ばかりだと思う。すみません;鋭い感性のもと静謐に語られる文学というかんじ。
カム
ITANコミックス全1巻 / 講談社
ジャンル:少女・ドラマ /好み度:★★★★☆