白血病を克服し約1年遅れで高校に入学してきた春太郎、彼の親友となる翔太をはじめとするクラスメイトや教師の学園生活を描いた著者版高校生日記。
一応癌を克服した少年・春太郎が主人公ですが、エピソードによって主格が変わるタイプの学園ドラマ。漫画を描いたり読んだりオタク的ベクトルが濃い目なのが特徴か。
春太郎も含めたやったら明るくあけっぴろげな家族も心の弱い部分があったり、自分が愛している不倫相手と自分を好きな相手との間にゆれる女性的記号がすくない教諭のエピソード、文化祭の出し物で本格的な漫画を描いてみたことから真剣にプロを意識する2人、いろんな青春物語が綴られています。淡々とした話運びなのになにかしら印象に残る構成が魅力。人の心はいろんな面を持ち普段隠した面がさらけだされたときの演出が心に染みる。
濃いオタク少年もメインキャラに入っているためその活動たる同人誌業界の説明も丁寧でした。一般誌だからか発表された当時の認知度を鑑みてなのか。学園祭の演劇の話はいろんな意味で笑えた・・。濃い・・濃いよ。真島少年。
ラストの主人公の病気のエピソードは、ああ!そうだった!とはっとさせられました。ストーリーのはじめから主人公は癌を克服して順風満帆のはずなのに、なんかひっかかってたんですよね。癌という病では常識のことをすっかり忘れてた;読者にひっかかりを残したまま物語を終了させる演出は西洋骨董洋菓子店と同じ。
よしながふみ
ウィングスコミックス全4巻 / 新書館
白泉社文庫全3巻 / 白泉社
ジャンル:少女・学園 / 好み度:★★★★☆
それにしても文庫版はなぜ白泉社から出ているのか・・。新書館だって漫画文庫シリーズ出せるのにね。不思議。