風の流れのように次元を行き来する(自らの意思では移動できない)ファザードと、肉体を共有する5つの意識たちの物語。
ファンタジー世界から近未来、地球外の星とまさにいろんなところに行っています。意識には各々の固有の風貌?があり、意識を交代すると風貌も変化するので多重人格というより複合生命体というべきでしょうか。ファザード以外は人の意識ではないのですが、風貌が違うだけでしゃべったり、恋をしたり、友情を育んだりします。
狼の狼面(ウルフフェイス)、意識体の教授(プロフェッサー)、龍のナーク、二枚羽の白鳥の二対(ツイン)、作品中にいまだ登場していない「?」(仮名)、そして彼らのまとめ役である外づらという名のファザード。彼らはたどり着いた世界で、出会いや別れをくりかえし、喜びや悲しみを感じ、その世界の矛盾や価値観を見つめていきます。彼らが作中でも言っているように、ファザードたちは主人公でありながらあくまで傍観者(物語の脇役)であるため、かえって物語に深みが増し、作者の語りたいテーマが知らずの内に心に残っているという感じです。次元マニアの私にとっては、ファザードたちの設定もかなりツボだったりもします。自分たちは何者なのか。彼らに限らない、永遠の命題です。
篠原烏童
ウイングスコミックス1~巻/ウィングス文庫1~/新書館
ジャンル:ファンタジー・SF他 / 好み度:★★★★★/おすすめ