うみべの女の子 浅野いにお

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少女・小梅は、憧れの先輩とデートはするが、噂通り誠実でない態度を取られ幻滅しつつも恋愛感情を捨てきれない中途半端で割り切れない気持ちを持て余す。そしてそれを払拭するかのように、かつて自分に告白した少年磯辺と、恋愛感情を育てるより先に体を繋げる。少年・磯辺も相手が自分に気持ちがないと知りつつも小梅とずるずるとつきあうが、小梅が嫉妬からか少年が持つあるファイルをパソコンから削除したことなどから小梅を突き放す。そして小梅と磯辺の仲をいぶかしむ野球部員の少年に磯辺は呼び出され・・。
海の近くの小さな町を舞台にした切なくも痛々しい中学生の青春群像。おそらくは多くの住民が昔からの地元民という社会での話。枠外では理解しがたいが枠内では一般的な指針というものは少なからずあり、青春を謳歌するための選択肢が限られている中でそれに準じる思春期の子供たち。主人公の少年・磯辺は外から来た人間であり、その視点から世界を視る構成はわかりやすいなと。
どの人物に移入するかによりさまざまな解釈を取れそうな内容という印象。青春を謳歌できない彼らの不安や憤りや価値観の相違による衝突が静かにリアルに描かれています。
小梅と磯辺はたぶん客観的には両思いなんだろうけど互いが互いの気持ちを伝えきれてなくてズレが生じているのかなあ。そうだとしたらやるせない。あと小梅の友人の一人の言動がいろんな意味でこわい。
痛く切ないやるせない話ではありますが読ませる構成なのは確か。個人的には、どうしようもない寂寥を感じるけれど鬱になるほどではなく物語に没頭できるタイトルです。個人的には昔見た突っ込んだ心情描写をテーマとする邦画のような懐かしさも覚えるタイトル。

浅野いにお
f×コミックス全2巻 / 大田出版
ジャンル:青年・青春 / 好み度:★★★★☆