はるか未来。火星を出発した宇宙船団は地球へ向かっていた。彼らの目的は地球奪還。6度失敗し7度目の背水の陣で望む彼らの前に立ちはだかるのは巨大な少女の姿をしたガールデバイス。本格的叙情SF物語。
多くの犠牲と地球側の種族の協力で徐々に目的に近づくメンバーたちという流れ。主人公は船団に配属された一人の少年。彼は地球のある学生としてある女子との夢を見続ける。主人公には自覚のないある謎があり奪還戦闘と彼が見る夢には深いかかわりがあるという設定。
緻密で描きこまれた画面、ある意味レトロで無骨な火星側の戦闘機やセーラー服を着た女子学生の姿をした巨大でグロテスクなガールデバイスのデザインが強烈なインパクトを放っています。
可憐な少女の姿に機械のような切り口を除かせる途切れた手足など奇怪な姿のデバイスたち。なまじ表情が作られる場合もあるのが余計歪で怖い。とにかく独創的でスケールの大きい描写に圧倒されっぱなしでした。昔の本格SF映画を見ているような印象も。
地球をめぐっての戦い、人類の存亡とか次々失われていく命とか大仰なSF戦闘、ネタバレになりますがその根幹は現実にもよくある思春期の感情のすれ違いというあたりが一層物語のせつなさとやるせなさをかもし出しています。話の構造はわりと単純だけど奥が深いというか。
いろんな意味でエグい展開があるので好みが分かれるところですが物語としても視覚のインパクトとしてもぬきんでたものがあるタイトル。
杉山実 / 青林工藝舎全1巻
ジャンル:青年・SF / 好み度:★★★★☆