出版社の事情により少年怪奇シリーズ隣の町で死んだひと・終電時刻から抜粋&加筆追加してタイトルも変更したタイトル。各話の感想は前コミックスと同じ場合があります。
「隣の町で死んだひと」のこの国は深夜かぎりが削除されています。この話けっこう好きだったんだけどなー;
上巻:隣の町で死んだひと、怪談六話・終電時刻・番町サカナ屋敷・終電時刻After
下巻:ディープフリーズ、仔鹿狩り、近似死1/2、彼女の字、高層階保健室
「隣の町で死んだひと」
いわゆる学校の怪談ネタ。一番厄介なのは思い込みによるうわさなんだよなあと実感したり。頭のいい人というのは、的確にものの本質を見極め、かつ遊び心のある人ですよね。
「怪談六夜」
幼少期に幽霊に会いに行った経験を持ついとこ同士の物語。友情にこだわる女の子とクールを装いつつも中身は熱血な男の子のカップルはいいですね。
「終電時刻」(終電時刻より再録)
一登は、初めて買った宝くじで2億円を当て、豪快に使い切った直後に事故で死んでしまった。未練が思い当たらないのに幽霊になって駅構内をさまよう一登は、夜中の線路でバイオリンを弾く少年テツと出会う...。一登とテツのふれあいとその結末は、さみしいけど悲しくない、そんな気持ちになりました。また、一登と彼の周りの人々の行動を見ていると、どんな状況になろうと自分のスタンスをくずさないというのは、難しいようだけど実は簡単なことなのだと感じるのです。
「番町サカナ屋敷」(終電時刻より再録)
かの月光仮面が放映されていた時代の、二人の少年の物語。龍司と陽介は、少年らしい望みのため、見取り図を作りに幽霊屋敷へ忍び込むが...。主人公の少年たちの、他人には決して見せない顔を互いがいるときには見せる親友同士という、関係とその描写が実にいいのです。幽霊屋敷のオチはちょっとひっかかるものあるというか消化しきれない感じがするのですがわざとこういう効果を狙ったのかもしれません。
「ディープフリーズ」(仔鹿狩りより再録)
正解基準不明の質問形式のチャットゲームに2516問正解した少女・行哉とゲームを主催したある特殊な能力を持つ青年・温和の物語。温和の能力、強い思いを読みとる力と、思いを凍結するという力の設定が面白く、また物語にうまく使われています。また行哉の勝気だけど涙もろい性格も良かったです。彼らの先が見てみたいなあ...。純粋で掛値なしのまっすぐな感情。
「終電時刻After」(描きおろし)
終電時刻の後日談です。
「仔鹿狩り」「近似死1/2」
ディープフリーズの続編。人の心の影の部分が描写されていたように思います。常識とか対面とかそういうのをとっぱらった状態で、さみしくて苦しいときに吹き出る感情の描写は鬼気迫るものがありますね。自分の価値観を否定されるいたたまれない気持ちがリアルに表現されています。
「彼女の字」
せつない系。1話目で植物状態だったけど復活した川村君と復活後彼女になった女の子。彼女のメール友達のお話。スイッチが入るといてもたってもいられなくなる創作の情熱があるってちょっとうらやましいですね。彼女のメール友達の「現象」が恐怖よりも人のせつなさを感じます。
「高層階保健室」
描きおろし作品。唯一人外と人間の問答(?)もの。ドラマだけどコメディ。人生はいろいろ大変だし難儀なこともあるけど楽しいものなのです。人外も時代の変化に難儀しているというオチが面白かったです。
なるしまゆり
あすかコミックスDX/全2巻/角川書店
ジャンル:少女・ミステリー・ドラマ/好み度:★★★★★