この靴しりませんか? 水谷フーカ

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現代の街を舞台に童話をモチーフにした柔らかな百合短編集。「この靴しりませんか?」「オオカミの憂鬱」「わたしのアヒルの子」「雪のお姫さま」「はみだし音楽隊」「その後の音楽隊」「金の靴、銀の靴」を収録。
著者は百合初挑戦ということで手探り状態だった模様。それゆえ百合を知らない人でもそうでない人にも、ほんわかあったかくなるような柔らかく微笑ましい作品集に仕上がっていると思われ。
現代が舞台ですが、シンデレラや雪の女王など有名な寓話をモチーフにしているのが特徴。そこはかとなくテーマが決まっているところも好印象でした。
「この靴しりませんか?」「金の靴、銀の靴」
めったに外出しない在宅ワーカーの女性は歯医者で靴を片方だけ履き間違いられてしまう。交換してもらうために探すと共にその持ち主に思いを馳せることになるが。どんな人だろうと想像してみたり会うためにおしゃれしたりとかいろいろじたじたしている主人公が可愛い。金の靴、銀の靴は可愛い靴の持ち主側の視点の短編。お嬢で可愛い風貌さばっとした気質なところが萌えた(笑)
「オオカミの憂鬱」
地方の小さな百貨店のエレベーターガールを勤める女性は幼少期から女の子に慕われ自身も女の子が好き。エレベーターを利用する女性客を魅了することがささやかな楽しみだった。そんな中、好みドストライクの少女がやってくる。いつものように魅了させようとするも自分に興味を示さない態度。主人公はムキになってふりむかせようとするが・・。えーと、これ著者の別作品の百合バージョンのような。主人公のタイプも似てるし行動もそのままだわ。
「わたしのアヒルの子」
美人の美加と冴えない千穂は幼稚園からずーっと一緒で友達同士。千穂が大学のカップリングゲームに出ることになるが。美加は千穂が好きで2人きりだけでいいという感じ、カップリングゲームがきっかけで自分の独占欲が千穂の世界を狭めているのではと懸念する、千穂は千穂で美加に頼ってばかりではと思っていた。
当人同士が知らず相思相愛でしたというお話。
「雪のお姫さま」
子供たちの劇団が舞台。雪の女王のゲルダ役になり、初めて共演するカイ役の少女に対しはじめは反発するも惹かれていく。しかしカイ役の少女は女王役の女性に恋する目を向ける。役どころそのままの人物関係と少女らしい心情の機微が印象的でした。めずらしい片恋の話かな?
「はみだし音楽隊」「その後の音楽隊」
吹奏楽部の補欠要員5人の女の子たちのお話。主人公は素人同然だが補欠の一人の女の子に彫れて入部した主人公と、腕はいいけど癖がありという理由で補欠な4人。なにかと味方になってくれた顧問の女性教諭の結婚が決まり日頃のお礼として演奏をプレゼントすることに。青春ものな展開と5人の生徒のぐるぐる恋愛模様が興味深かったです。

2016年に完全版として白泉社から再発売されました。

水谷フーカ
白泉社楽園コミックス全1巻 / 白泉社
ジャンル:百合 / 好み度:★★★★★