父は劇画系少年・青年漫画家、母はレディコミ漫画家、妹は四コマ漫画家、そして著者も青年漫画家という国内でも珍しい漫画家一家の家族や自伝をテーマにした実録漫画。
兄弟・親子で漫画家というのはけっこうありますが一家全員というのはさすがに珍しいそうです。このタイトルの描き手であり主役の著者の視点を通して、漫画家一家の風景や著者自身の話など漫画稼業にまつわるエピソードが綴られています。
世に数多ある実録漫画は事実を淡々と描くというか報告に近い構成なんですが、こちらは実録漫画というよりドキュメントドラマのような構成です。漫画絵なんだけど写実的な絵で画面構成や演出の技術が高いからよけいにドラマを見ているようなんですよね。
著者から見た家族の紹介にはじまり、著者がデビューした際の家族の反応やアドバイスなどのやりとり、漫画家となるときの著者のこだわりなどから、両親の馴れ初めエピソードや漫画業界関連のエピソードと、その内容は多岐に渡ります。
主人公である著者の独白も父親の背を見る描写もいろんな意味でプロを感じました。
全員漫画家とはいえジャンルがほとんどかぶっていないしお互いの仕事の状況にあまり干渉しないというところが家族としてうまくいく要因なんだろうなと思います。
著者も父親も青年系といえば青年系ですが劇画系と恋愛系でジャンルの住み分けできてるしなー。でも著者はかなり父親を意識しているようですが。著者が父親を意識する気持ちはなんとなく納得できるし、またお父さんの行動、特に表に出さずともやはり娘が気になるというところはある意味理想の父親だなあと思ったり。
あとアニメ化で一気に一時期動くお金が増えたことによる弊害の話が印象的でした。ものっそい現実的な話だなあと。
大島永遠
アクションコミックス全2巻 / 双葉社
ジャンル:エッセイ・自伝 / 好み度:★★★☆☆