鋼の錬金術師 荒川弘

鋼の錬金術師  (ガンガンコミックス)
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錬金術が身近な技術として存在する世界。死んだ母親を蘇らせるため禁忌の錬金術を行使した結果脚と腕を失った兄・エドワードと、肉体を失い鎧に魂を繋ぎとめている弟・アルフォンス。自分たちの肉体を取り戻すため賢者の石を探すうちに石に関わる策謀に巻き込まれていく。
独特な世界観、少年漫画らしい見ごたえのあるアクションと魅力的なキャラクター、緻密に練られたストーリー構成。特に物語の構成が絶妙。命という重いテーマを扱いなにげに死人が多いハードな展開なのに読んでいて暗い気持ちにならないし、長期連載にも関わらず中だるみがなく常にハラハラドキドキ(笑)させてくれる途中で飽きることのない展開。雑誌連載で見てもコミックスで見ても読ませる構成の漫画ってはじめてでした。
シリアス一辺倒じゃなくコメディもきっちり入れテーマも明確。善や悪、正直者、腹黒、とタイプは違えどメインから脇キャラに至るまで登場人物が生き生きしているんですよね。あやふやで陰鬱なイメージのキャラがいないからかな。方向は違えど一本芯が通っているというか自分に正直というか。
しかし逆をかえすと心情描写はちょっとあっさりしすぎではあります。特に苦悩という描写がね。壁にぶち当たったときの悩みは時間をかけずに解消されてしまうところが、読み手によっては物足りなく感じるかもしれません。私はグダグダとひきずる描写はあまり好きではないので好みなんですが、前向きな切り替えが早いなとは感じました。
というのはやっぱり著者の人生観が大いに影響しているんだろうなとなんとなく感じていました。それは09年に出たエッセイ漫画で確信になったわけですが、著者が前向きで健康的な精神の持ち主なんだろうなと。悩んだり迷ったりしても沈むより奮起するタイプなんだろうなと。
あと登場する女性がみんなかっこいいというか漢前なのも特徴か。自分の分を知り、確固たる意志を持ち、男性に守られるだけじゃない好きな相手と共に戦うといったキャラたち。いいなあ。
賛否両論あるかもですが、私はこういう生命力のある話はやっぱり読み応えがありますね。

荒川弘
ガンガンコミックス全27巻 / スクウェアエニックス
ジャンル:少年・ファンタジー / 好み度:★★★★★おすすめ

一般視点からも腐視点からもハマッてしまったタイトル。好き過ぎて、いまさらな時期に感想を書くという;