それを言ったらおしまいよ よしながふみ

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著者のセンスが映えるちょっとせつない短編集。ほとんどボーイズラブジャンルですが初老の恋の話も1篇あり。

それを言ったらおしまいよ
美形医師・耕平と浮世離れな雰囲気を持つゲイの作詞家・崇は高校時代からの友人。崇は耕平に恋慕しており耕平はそれを知りつつもつっこんだ関係ではない。
耕平はことあるごとにはらへったのメールを送信する崇に文句を言いつつも差し入れをもって行くような友人関係。耕平にとって、ボロアパートに住む崇は自分が面倒みないとだめだという気持ちがあったが、耕平に見合いの話が来たことから二人の関係は変化する。短編なので書きすぎると結末まで書いてしまう;;
著者のBLは短編でも展開に無理を感じないところが好きなんですよね。ストーリーも自然ならベッドインの流れも自然。ほやっとした崇のキャラと耕平の苦虫つぶした顔に萌え(笑)

私の永遠の恋人
セクサロイドが作成可能な未来の話。病気のために無菌室から出られない弟のために人形師の兄はセクサロイドを与えるが。ボーイズラブなのでセクサロイドは男性。
弟の本当の望みを叶えたときの兄の表情が印象的。これもせつない系か。キャラ描写が上手くボーイズラブとしても印象に残るタイトルですが、ちょっと驚く結末でSFショートストーリーとしても秀逸な出来かと。

おとぎの国
人間がまったくいなくなった東京を歩く青年。一月ぶりに出会った少年は意外なことを話す。少年の望みと罰とは。
セカイ系御伽噺もしくはSFブラックショート。ちょっとBL風味ですがそれは物語にとって重要な意味はなく。

ある五月
唯一BL要素のない話。初老の大学教授の男性と30代の料理屋の女将のせつない恋の物語。恋というか結婚するのですが・・。妻の自覚のない浮世離れした行動の描写が印象深かったです。周囲から見ると引かれる行動、びっくりする慰め方、失くしたくないとつなぎとめる行動。悪気はない、当人は人に受け入れられにくい行動ということに気が付いていないだけにせつなすぎる。

ピアニスト
落ちぶれたかつての天才ピアニストは気まぐれに書いた曲の印税で食いつないでいた。年をとるごとに理想と現実のギャップが広がり生きるのもおっくうになってきた彼は偶然であった青年との夢想にふける。
短い話なのに伏線とオチが利いたお話。ちなみにピアニストさんはゲイです。

よしながふみ
FXコミックス全1巻 / 太田出版
ジャンル:ボーイズラブ・レディース / 好み度:★★★★★