王位継承のしきたりで、被害を出さず徳と威厳をもって武力のみを制して降伏させるという理念の元、巨大だが丸腰のロボット1体と身一つで地球征服にやってきた帝国の皇子・アルファルド。しかしその侵略は遅々として進まない、というか本人ほとんどやる気なし。
というのも何も持たない自分に生活するための助力をした商店街の人々の優しさを経験し、特にドーナツ屋の看板娘に好意を持つため。また元々三男で本来後継者になりたいわけではないことも理由の1つ。やる気がないのでサボりがち、板ばさみ状態で悩んでいるけど親の仕送りでダラダラするという傍目から見るとほぼニート。
父親からの連絡に尻をたたかれるとしぶしぶロボットに征服活動に行くが、町を破壊したくないのに地球防衛軍とのやりとりの結果街は壊滅状態が常という。来襲者当人ではなく地球防衛隊が街を破壊するという皮肉が妙にリアル。やれ宇宙人だ征服だとバックボーンのスケールは大きいけれど実際やることはご近所的というギャップが面白い。
本格SF設定のドタバタアクションかと思いきや本来王となる器を持ちつつ出奔した次男が登場してから骨太な家族・人間ドラマが展開されていきます。
1つ1つのエピソードを丁寧に描き、各々の登場人物の背景や伏線を下敷きに読ませる人間ドラマが凝縮された秀逸な内容。そして高レベルの作画技術と並々ならぬロボット(デザイン)への愛を感じる画面が素晴らしい。1巻の尺でこれだけ人物描写とロボットを魅せる描写が詰まっているのはすごいなあ。
ただ、ラストは綺麗にまとめられたものの結局どうなったんだろうという疑問もあったり。
木村聡
ジャンプコミックスS.Q全1巻 / 集英社
ジャンル:少年・SF・ドラマ /好み度:★★★★☆
