ヤクザの世界から抜けるため刑務所に入り勤めを追え出所した青年。彼が外に出て向かう先は、刑務所の慰安で魅了された、名人と名高い落語家の元。件の落語家は今まで頑なに弟子を取らなかったのだが、理由があるのか青年の気質か弟子入りが許されることになる。
題名にあるように舞台は昭和50年ごろのよう。落語が題材なので落語の技に関する匠的な要素ももちろんあるのですが、それ以上に落語に関わる人間たちの当時の心情を描くという主題が目を惹きます。
落語の名人は芸事に携わる人に見られる気難しさがあり徐々に廃れていく落語界に思うところあり。また彼には早世した親友の同期がおり、その同期の娘を引き取っているが娘自身は親の死に疑念を抱き女の身での落語に携わることの難しさを感じつつも親の落語を残したいという気持ちがある。
主人公自身の成長物語だけでなく、名人とその故人の忘れ形見の、彼ら自身と故人を絡めたドラマが展開されていて、深く読み応えのある構成と全体に漂うしっとりとした雰囲気に魅了されます。中身の詰まった人間ドラマが好きな人にはお勧め。
雲田はるこ
KC×ITAN全10巻 / 講談社
ジャンル:女性・ドラマ / 好み度:★★★★☆