男性が消滅し女性の卵子のみで子孫を生み出している世界。そこに生まれた唯一の男性体・姫と、破綻し始めた世界の運命の物語。
舞台ははるか未来。男性が消滅し女性だけになった地球。女性同士がカップルを作り互いの卵子を融合して一方が出産することにより子孫を生み出していた。そんな世界に突如生まれた唯一の男性体・姫。彼は人気者の同級生・皇に愛されていたが、自分の体の秘密を明かしたことから２人は決別する。そして時が経ち、世界では人の寿命が極端に短くなる現象が続き問題視されていた。その打開策として男性の因子を取り込む研究がなされており、その研究所に皇が配属されることに。出会いはしていないが実は主人公もその研究所に所属していたという流れ。
片方だけの性別の世界とその歪み、設定のみならず構成も主題も本格的なSFであり、人間模様もぬるさの少なめな濃いドラマが展開されています。オブラートをとっぱらった剥き身の感情描写という印象。
性別をカムアウトした途端、嫌悪の情をあからさまに出され別れるというあたりは残酷なまでにリアル。それでも相手を慕い続ける健気さと置かれる状況はせつない。また主人公を拒絶した皇は皇で主人公に裏切られた気持ちを持っているかんじ。男性に対し生理的に近い嫌悪があるという背景があるからなんだけど。
また主人公を愛眼する研究所のトップであるいとこの存在も気になるところ。身内で同居してるのに主人公の性別に気づかないってのはどうなんだろうとは思うけどばれたときの行動を想像するとけっこう怖い考えに。
阿仁谷ユイジ
KC×ITAN全９巻 / 講談社
ジャンル：少女・SF / 好み度：★★★★☆