日本有数のお嬢様学校の中でも上流階級独自の上品さを持ち、唯一専属の執事を伴っているお嬢様。彼女は成人になるとアラブの王族の第三夫人となる政略結婚を決められており、それまでに庶民の生活を体験し、さまざまな人間と接することを決める。
セレブの令嬢が、買い食いやアルバイトといった、彼女にとって未知の一般庶民の生活の体験を通してさまざまな出来事を描いたコメディ。初めて体験することへの興奮や驚愕や歓喜、客観的に見て一般常識とベクトルがずれつつも真っ直ぐに当たり、きれいなばかりでない事実も受け止め学ぶお嬢様の行動描写と、令嬢に輪をかけて庶民感覚が乏しく一本気で極端、突き抜けた気質の令嬢を守る専属執事のコンビ描写が見所。ゆえにコメディ的にはコンビでボケ、周囲が突っこむという構図に。
絶対者である父への反発を含め理不尽なことはあたりまえに存在し人間は無条件に信じるものでもないことを知る令嬢があえて信じきれる良心を探す、とお嬢様の庶民生活体験という単純なコメディにとどまらない奥の深いテーマも織り込まれている模様。
結婚への諦めの気持ちや結婚まで精一杯やりたいことをやる、というのは終活に似ている気もする。真っ向勝負なお嬢様の気質は凛々しくも美しい。しかし題名からすると執事のほうをフィーチャーして読まないといけないのかね。
東條仁
ニチブンコミックス全4巻 / 日本文芸社
ジャンル:青年・ドラマ・コメディ / 好み度:★★★★☆