半人半馬の種族ケンタウロスが人間社会でごく普通に働き生活する世界。馬具メーカーの新米営業の健太郎くんをはじめとする人間社会で働くケンタウロスと彼らの近しい人間との物語。
ケンタウロス雇用に関する法が改正され彼らの社会進出が進み馴染んできたとはいえ、その特性や生活様式や常識などの違いによる難儀は払拭しきれないこともあり、馬という認識を持たれるがゆえの偏見も多少あり。
そんな社会状況で、営業リーマン・蕎麦屋・靴屋・モデル・メッセンジャーといった職についたケンタウロスたちの暮らしが描かれています。
メインは馬具メーカーの新米営業と人間の先輩社員の話。彼らの営業活動の様子や仕事以外でのやりとりや他愛のない会話などを通して人とケンタウロスの間のギャップを軽快でスタイリッシュなコメディタッチで描かれています。都市部における彼らにあわせた環境の整備とか、馬刺しを食べると共食いと勘違いされるとか、細かて上手い設定、また嘘設定なのに現代社会でもありそうなリアリティをしっかり感じられる構成が印象的でした。
他には蕎麦屋に憧れて店にバイトに入ったのに厨房に入れず出前ばかりな青年、自身では履けない靴に魅了され靴職人になる青年、下半身は差し替えられることに憤りを感じるモデル、メッセンジャーになった早い足を持つ健太郎の友人の話があります。
コメディばかりでなく、人間社会では規格外な部分がネックになり希望したとおりに上手くいかない悩み、それを全て理解し傍らに在る相手との出会いの僥倖、そして長命のケンタウロスがかけがえのない人間の相手を得てもどうしても人間が先に逝くというせつなさも見所。さりげない雰囲気の中に組み込まれた骨のある内容が魅力のタイトル。
えすとえむ
ゼロコミックス全1巻 / リブレ出版
ジャンル:少女・ファンタジー / 好み度:★★★★★