兎が二匹 山うた

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不老不死で死にたがりの女性のあがきと彼女を愛する男性とのこいものがたり。
古物・骨董の修復を生業とする女性の日課は自殺で同棲する青年の日課は自殺幇助。女性は不老不死でアラウンドフォーハンドレッドな年齢。青年は普通の人間で19歳。女性は過去の経験の辛い記憶から逃げたくて毎日死ぬことを望むがままならず、青年は女性にベタ惚れで本当はやりたくないけど彼女の望むまま幇助を行う。そんな中、女性は国の力を借りれば死ねるかもとテロの犯人と名乗り出る。場面は切り替わり一年後にヒロインは海岸に打ち上げられ、幸せになれと残した青年の様子を訪ねてみれば・・。
青年の状況を知った女性の場面の後、彼女の過去の出来事に焦点を当てた話になっていく。つまるところ彼女の死にたいほどに辛い記憶、ということなのだろう。
ざっくりした絵柄と切なく激しく慟哭したくなるような作風があいまって心に刻まれる内容だった。同じ時間を生きられない男女の話でありふたりのなれそめを見るに疑似家族ものであり生きるということが主題なのだろう。あとあの時代の広島の話でもあるようだ。ヒロインの表情がいちいち心に刺さる。せつなさでぎゅうってなる感覚も久方ぶりだ。
結末を先に描写しての過去話という構成はあまり好みではないしどう話を着地させるんだろうなあと思っていたら・・見事、というほかない。結末を読み手側にゆだねる手法はわりとあるがこの作品は秀逸だと感じた。題名は兎はさみしいと・・という俗説から来てるのか。

山うた
バンチコミックス全2巻 / 新潮社
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★★