西暦2000年、太平洋に打ち込まれた核により日本は壊滅状態に陥った。多くの犠牲者と都市機能の停止、加えて充満する放射能。米国は日本の監視（表向きは援助）を目的とする施設を各地に建設、その内のひとつ房総半島にある施設「Zoo」から物語は始まる。主人公・ゲオと仲間たちはその施設に暮らしていた。
ドラッグ「ＺＥＲＯ」は、壊滅する前の時代・ゼロ時代の自分の前世を見ることができる薬。売人であり自分も服用する主人公ゲオは、その薬の売人であり自分も服用していた。管理された生活の中、彼の仲間である少女が殺され容疑者にされる。そのことをきっかけにゲオは外の世界を知ることになる。
崩壊し荒廃した土地、徹底管理された施設で育った少年少女、という世紀末系SF設定の壮大な物語。主人公たちの思春期付近の不安定で純粋な心理描写と鮮烈とも言える生き様、緻密な陰謀やら世界情勢の描写が魅力のタイトル。
ゼロ時代の巨大コンピュータの起動を目論む元帥、前世の夢で行われるゲームと現在の面々とのつながりとか、多くの伏線と丁寧に組まれた設定に引き込まれていきました。
近未来の話と前世・ゼロ時代の描写が交錯する演出とか世界の根幹の設定とか本当に読み応えのある本格的な内容。世界設定のスケールの大きさと登場人物の身近な感情表現とのバランスも興味深かったです。本格的なＳＦを楽しみたい人向け。
やまざき貴子
花とゆめコミックス全11巻 / 白泉社
小学館文庫全６巻 / 小学館
ジャンル：少女・SF / 好み度：★★★★☆