スイートな王様 水島みき



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お菓子作りの名人の喫茶店の店主夏流に一目ぼれしたくるみ。実は彼は特殊な体質(?)を持ち、人間が満足したときに出す精気を食べる種族だった。
父親の仕事の関係で一人暮らしをしていた少女くるみは、ひょんなことから喫茶店の店主夏流と知り合う。甘いものが大好きなくるみは、彼の作るお菓子に魅了され喫茶店に通ううちに夏流の秘密を知ることになる。
夏流は人間の精気で栄養を摂取する種族。といっても人間の命を奪うというわけではなく、花と昆虫の共生関係に近い摂取方法かな。おいしいものを食べたときの幸福感から生じる精気のおすそわけを得るために、おいしいお菓子を提供する喫茶店を経営しているという設定。
くるみは夏流と体質が合い、理解と同意のもと2人は精気の提供者と享受者の関係になる展開。まあ吸血鬼をはじめとして異形と普通の人間の恋愛ものの定番の設定かな。理性がちょいぶっとんで迫られたり、すれ違いで悩んだりという展開も定番ながら魅せる演出。
栄養の受け渡しだけの存在で終わらせるのかと恋愛関係に至るのかという狭間に揺れる2人の心理描写とか、夏流の異形にからむ他者の介入とかがメインかな。
恋愛方面では、同じ「土俵」な恋のライバルキャラが現れるわけでなく(男の子と過去の女性くらいか)主に夏流が普通の人間ではないことでの壁が障害になっているパターンが多く、主人公が悩みつつもその壁にぶつかっていくという展開がほとんどです。女性が好むシチュエーションや展開のツボは抑えてある印象を受けました。
あと特徴的なのは、スイーツ製作の薀蓄がとても詳しく描写されています。まあ商売以外でもお客に満足してもらわなければならない設定上、本格的なスイーツを出す喫茶店が舞台になっているわけですからして。パティシエとまではいかずともお菓子製作に興味がある人には有意義な要素かも。
基本的に読者側から見ればもう相思相愛状態なのに当人たちは互いに確認できていないみたいな状況が続き最後にまとまるという構成のようで。はらはらするシリアスとかドラマチックというにはちょいぬるめなので、とことんシリアスな話を好む人にはちょっとだけ物足りないかも。

水島みき
プリンセスコミックス全3巻 / 秋田書店
ジャンル:少女・恋愛 / 好み度:★★★☆☆