羽根くんシリーズの名脇役・那智聖樹を主人公にしたせつなくも激しい愛情を描いたシリアスストーリー。
穏やかな父に反発する聖樹は父の仕事仲間の美しい女性に恋をする。しかしその女性は父を愛しており2人は再婚することに。ピエタというのはイタリアにある聖母像で聖樹が固執する存在。当時の聖樹の女性観というか女性に求める望みみたいなものの象徴という立ち位置かな。
耽美というか昔の昼メロを髣髴とさせる妖艶でけだるげな雰囲気が特徴。終始シリアスでシビアでおちゃらけ度がまったくないタイトルなので羽根くんシリーズの聖樹から見た人はちょっと吃驚するかも。失恋から自棄というか慰め的流れからBL展開になったのは吃驚したけどしっくりきたなあ(笑)
父親のキャラがどこまでも「父親」なせいかどのキャラもいい人だからか、どろどろしていなくて、どこまでも切なく苦しい思春期の激しい痛みというイメージがあるタイトルでした。レディースのノリに近い感じがするかなあ。
1巻目は実らなかった苦しい恋を描き、2巻目はその恋をふっきるため、かねてより見たかったピエタ像の前に来た際出会った少女との出会いが描かれています。酒に溺れる父を持つ純粋で無垢な少女に惹かれる聖樹、そして相手も同じく。しかし・・という流れ。シビアな展開がありますが結局2人は両思いになります。
普通ならずっといっしょにという展開なのかもですが、現実的な問題から聖樹は彼女をおいて日本に帰ります。時系列的にはこの後羽根くんシリーズの聖樹になるのかな。羽根くんシリーズのラストで彼女を迎えに行き結婚したというエピソードが挟まれていたのが印象的でした。
野妻まゆみ
双葉文庫全1巻 / 双葉社
ジャンル:少女・恋愛 / 好み度:★★★★☆