真珠夫人 さちみりほ / 菊池寛

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男爵令嬢の瑠璃子は青年直也と結婚の約束を交わしていたが、高利貸しの荘田勝平に画策され彼の妻となることを余儀なくされる。菊池寛原作。上流階級を高潔に生き抜く瑠璃子を中心に男女の愛憎劇を描いた大正ロマンスストーリー。
どうもドラマ化したときにコミカライズされた作品のようです。ドラマは観たことがないのですが、あとがきを読むとドラマではなく原作ベースのストーリー構成のようです。といっても漫画オリジナルの設定や展開、解釈が色濃い模様。
恋人との仲を裂かれ父を自殺未遂に追いやった相手に復讐するために嫁ぐも夫亡き後は嫁いだ家を切り盛りする瑠璃子、金の力でもって瑠璃子を後妻に迎える悪役だが実は金はあっても寂しさを持っており瑠璃子に癒しを求めた面があったり親としての情を見せたりする荘田、女性として母として瑠璃子を理解する義理の娘、純粋な義理の息子や学生など瑠璃子に魅了された男性たち、かつての瑠璃子の恋人の直也、瑠璃子を見極めようとする直也の友人。どの登場人物もある意味一途というか、本質はいい人間だなと感じるキャラ設定が特徴かな。
上流階級の愛憎劇が主題なのですが、ドロドロしきっていない雰囲気とドラマチックな構成です。ボタンの掛け違えというか、各々好きな相手に自分が思う形で思ってもらえないジレンマから不協和音が発生してしまったというか。怒涛かつせつない、ある意味「優しい」展開とも言えるかも。
色恋以外では、夫が死んだ主人公が経営を維持するエピソードが印象的でした。一見媚を売っているようで実は時代に即した経営手腕ってあたりがツボでした。

原作:菊池寛 / 漫画:さちみりほ
秋田コミックスエレガンス全3巻 / 秋田書店
ジャンル:女性・純文原作・ドラマ / 好み度:★★★★☆