震災により首都が崩壊した近未来。この時代では、人間が使った物質に宿る残留思念を虚数値に変換する技術が存在する。虚数値が高ければ持ち主に大事に扱われたとして高値がつき、逆にないがしろにされたもしくは所持した人間に負の感情がうずまいている場合は危険なものになる。
その技術を用い骨董屋を経営する女性は、ある仕事から自分の過去を知りたいという少年サトルと出会う。少年のエピソードが物語の設定と紹介を兼ねており、その後少年は主人公の店で働くことに。店にはA.Iのしゃべる熊のぬいぐるみもおり、物語の潤滑の役割を担っています。
物に想いが宿るという、現実では言い伝えとか噂といった漠然とした事柄を明確に数値化できる、想いを感じ取ることができるというSF設定は絶妙。作品の雰囲気は万人向け。変にマニアックではないところが読みやすくて好印象。
近未来SF設定の物語ですがその根幹はやはり人間ドラマ。過去を見直し生きる指針を決める、生活するうえでの現実を知る、そんな感じの地に足がついたメッセージ性の高い展開が魅力のタイトル。
むらかわみちお
MFコミックスフラッパーシリーズ全3巻 / メディアファクトリー
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★☆