ヤマタノオロチ伝説による50年に1度の秘祭・天顕祭。オロチの贄となる運命を持つ女性と彼女を雇入れた鳶の若頭の青年の、祭の秘密とオロチとの戦いを描いたファンタジードラマ。
時は近未来、先に起こった「汚い戦争」で汚染された土地の穢れをフカシという特殊な竹によって浄化していく土地での物語。主人公はその土地の秘祭で贄となることを拒み逃走中、鳶の若頭の青年と出会い鳶の仕事につく。しかし主人公は逃れきれず、鳶の若頭は彼女を助けようとオロチと戦うといった展開。
SFと人間ドラマと日本神話を融合させた重厚なストーリー。神話がからんでいるせいか、日本という国独特の閉鎖された言い換えれば伝統や通例に従属する雰囲気とそれを打破する若い命を描いているような気がします。
人間同士の会話や街の風景などの人間社会の描写のさりげないリアルさ、場面の切り替えや1コマ1コマのアングルの緻密さ、激情と静寂の視点、見せ場であるクライマックスのアクションは画面いっぱいに展開される表現力にただただ圧倒されます。筆で描かれたような薄墨の線画もその効果を高めている模様。
賞をとられただけのことはある読み応えのあるタイトル。個人的に、こってこてじゃないのに心にズシンと来る人間描写が好きです。印象的だったのは、オロチとの心理?戦の描写。
白井弓子
ニューコミックス全1巻 / サンクチュアリパブリッシング
ジャンル:青年・ファンタジードラマ / 好み度:★★★★★