波のむこうに・電波の男（ひと）よ・海の満ちる音を収録した恋愛作品集。
「波のむこうに」
新任の中学女性教諭とラーメン屋でバイトする美男の物語。女性教諭は地味な顔だちのため常に男性に度外視されていた。赴任先の男性教諭にもその仕打ちを受け、消沈し海をふらふら歩いていたところに怪しい薬を発見、自暴自棄の気分のままその薬をあおる。すると女性教諭は死ぬどころか美人になる。周囲が１８０度の態度を見せる中、なじみのラーメン屋のバイトイケメンだけは反応がなく・・。
「電波の男よ」
学生時代からアマチュア無線が唯一の楽しみであるサラリーマン。見た目がイケてないせいか周囲ともなじめず陰鬱な気分の毎日。そんな中、彼は何度か無線交信し、唯一長く話をした女性「マリン」の声を社内電話で聞き、同じ社の中に彼女がいることを知る。多くの社員の中で探すことに心が折れそうだったが病院で偶然自分の余命を知り、どうせ死ぬならと、マリン探索のため彼なりの積極的な作戦に打って出るが・・。
「海の満ちる音」
裁縫の下請け会社に勤めミステリー小説愛好会に入っている女性は、愛好会の長の紹介で一人の男性と知り合う。どこか波長のあった２人はつきあいを続けるうちに男性は既婚者だったことがわかる。
うーん。どれもあらすじかくと全部オチまで書いてしまいそうでとめ所が難しい；
どの話も静と動が絶妙に組まれています。社会に出てそれなりの妥協と挫折を経験した大人の激しくも静かな恋模様。
言葉を用いず人物の表情と間だけで人物の心情の機微が克明に描写されているあたりさすがとしか言いようがなく。言葉が少ない故かたまにある「それ」は静かなインパクトがあります。
読み応えがあり物語としてうまくそして心に染み渡る内容。「波のむこうに」と「電波の男よ」は結末で物語のオチをつけ、「海の満ちる音」は印象深い台詞で物語を収束させているようです。
ああー、大好きなタイトルなのにちゃんと紹介できない自分が憎い；とにかく恋愛モノに慣れていない人でもお勧めの恋愛漫画。あとがきも著者節全開で楽しめました。
西炯子
フラワーズコミックス全１巻 / 小学館
ジャンル：少女・恋愛 / 好み度：★★★★★