父子家庭の親子と彼らの周囲の人たちの、各々の日常の出来事と思いを綴った連作集。
同じ世界観で、主軸となる父親と息子の話や、2人に縁のある人間に焦点をあてた話などがオム二パス形式で描かれています。
息子が彼女を妊娠させたかもと告白し父親がその彼女と検査に行く話「こどもの体温」、とあるきっかけで舅と父親が亡き妻のレシピの料理を作る話「ホームパーティ」、父親の大学自体の後輩で山岳事故で生き残った2人の話「僕の耳見た風景」、息子のクラスメイトでバレエ少年と謳われる少年の話「踊る王子様」、妊娠騒動時の彼女と息子の後日談「よくある一日」収録。
こどもの体温とホームパーティは、ハプニングからはじまり、感慨深い描写で落としているところが印象的でした。ホームパーティの料理は、料理をしなれない人でも簡単にできそうなレシピがいい。
僕の見た風景は、大学時代からの友人3人の青年の物語。彼らは山岳事故にあい、1人は亡くなり、一人は下半身不随、一人は軽症。軽症の青年は罪滅ぼしに半身不随の青年の面倒を自宅でみることに。彼らの関係の変化が見所。墓前の前での告白は軽く衝撃を受けました。この演出はたまらなく秀逸だなと感じたのを覚えています。さりげにグルメネタも加味されています(笑)
踊る王子様は実母の影響でバレエを学び天才と称されている少年の話。彼は大会を前に、師匠に、踊りに照れがあると言われてしまう。その原因を主軸の父子の様子で気づき精神的に成長するという展開。基本的にいい意味で自信家、周囲の奇異な目に気づかない大物タイプなところが好きだったな。劇的な描写がないのに主人公の心情の変化のインパクトが強かったのが印象的でした。
物語としての構成が秀逸だなあと感じたタイトル。「家族」のあり方をテーマに、そして人は誰しもなにかしらの過ちを犯す、それを叱咤し正しく導きそして許し優しく包むことの大切さをメッセージとしている模様。
そして著者の作品にはやはり料理とゲイが入ってるなと感じたタイトル。無理やりじゃなく自然に組み込んであるところが心憎い。
※2010年に白泉社文庫「こどもの体温/彼は花園で夢を見る」も発売。
よしながふみ
ウィングスコミックス全1巻 / 新書館
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★☆