天賦の声を持つどこ浮世離れした純朴な少年と歌の教師の青年の物語「ソルフェージュ」の他「本当に、やさしい。」「パンドラ」「昨日よりいつも違う日」「すこしだけ意地悪な告白」を収録したボーイズラブ作品集。※リブレ出版「本当にやさしい」「ソルフェージュ」を再編集した白泉社文庫版の感想です。
「本当に、やさしい。」
同棲相手と喧嘩の末動かなくなった相手に動揺し逃げた青年は、公園でビスケットを食べるかと問う奇妙な青年ゆうと出会う。サスペンス要素も含まれた悲しく切なくやるせなく美しい話。
「パンドラ」
江戸時代の話。元錠前破りの2人の青年の前に現れたのは外国人の血を引く咎人。からくりで綴じられた箱の開錠を依頼してきたのだ。理由を聞き箱を開けることになったが・・。元錠前破りの2人は恋仲で、箱を通して過去と現在を思い直すって展開かな。箱のオチも含め物語の構成が好き。
「昨日よりいつも違う日」
大学に落ちたのをはじめいろいろついていなかった青年は親友に押し倒される。とことんついていないと憤りを感じるが・・・。主人公の親友に対する心理描写が見所。こじんまりとまとめられた構成。
「すこしだけ意地悪な告白」
ニューヨークの町。弁護士の青年の結婚記念日のために弁護士とその友人は買い物袋を抱え2人は語る。買い物袋を抱えた男性2人が会話するという場面だけの話。会話の中で2人の現状と過去の話が綴られます。すれ違って時間がかかった2人。欧米風な演出と構成。
「ソルフェージュ」
長編BL。天賦の声を持つものの家庭の事情でレッスンができない少年に音楽を教え、なにかと援助する声楽の教師。教師はもともとゲイでひょんなことから少年と関係を持つ。性に疎くどこまでも純粋な少年と打算も知っている大人。愛憎とかいつまでも変わらなかった愛情とか各々の成長と人生模様とかが自然体で描写されています。BLとしても普通に人間ドラマとして楽しめる話です。
よしながふみ
白泉社文庫全1巻 / 白泉社
「本当にやさしい」「ソルフェージュ」各1巻 / リブレ出版
ジャンル:ボーイズラブ・ドラマ / 好み度:★★★★★