民俗学者・鈴木、彼の身内の美少女・小町、茶道家の息子の謙清。3人の出会いから始まる彼岸と此岸の狭間の妖しく切ない物語。
茶道家の息子・謙清はある日、謎の美少女から不可解な警告を受け殴られる。初対面の少女に受けた理不尽な仕打ちを奇妙に思う中、祖母から茶事を頼まれ、しぶしぶ言ってみるとそこには民俗学者の鈴木がいた。
あの世とこの世の境が物語の鍵。人の魂や妖怪のような存在がからむ怪奇要素を含んだ人間ドラマというべきか。
鈴木はある目的のために怪しい行動をおこし、鈴木の身内である美少女はその行動を止めたいとのぞみそのいざこざに謙清が巻き込まれているという関係かな。
ほぼ説明なしで怪しい状況が展開、終わってみて状況の説明が行われるというパターン。部外者たる謙清の視点で物語が進むので読者もどういう展開になるのか緊張しつつ読むことになる醍醐味が魅力。
なくしたものをとりもどそうとする妄執、その妄執を止める想い。その間でお人よしな青年は知らず彼らの橋渡しをすることになる。小町の鈴木に対する複雑な心情が印象的でした。
物語が動く展開のテンポの速さと人物の心情を描写する静寂の雰囲気のバランスが絶妙です。きちんと話が〆られていて読後感の良いところもお勧めのポイントだったり。
続編にあたる、鈴木の過去話「僕と彼女と先輩の話」、一作目の後日談「俺と彼等と彼女の話」も発表されました。
トジツキハジメ
俺と彼女と先生の話 / 僕と彼女と先輩の話 / 俺と彼等と彼女の話
ウィングスコミックス各全1巻 / 新書館
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★★