「人斬り龍馬」「二本松少年隊」「とどかぬ刃」など動乱の幕末を舞台にした物語、山に棲むという龍をめぐる「神の棲む山」を収録した時代絵巻。
「人斬り龍馬」
正直幕末の歴史には疎い。新撰組はまだ市っているが竜馬に至っては一般的な見解すらおぼつかない私。とりあえず武力行使などと対極にあるというイメージらしい龍馬は、この作品の中では幕府側を暗殺する人間となっています。ある意味ダークヒーローというべき?
十中八九逆転の創作ではあるのですが、新撰組に関連する実際の史実の「理由」として非常につじつまがあう構成になっています。そして龍馬は史実どおりの結末を迎え、それを指示したであろう者たちの発言や龍馬の幕を下ろした人物の不明瞭さという演出はうまいなあと。
物語の最後、打ち首寸前の近藤に対する志士たちの疑問への、近藤の答えは「歴史」の真理をついていると言えます。
「二本松少年隊」
二本松、少年白虎隊の1人の少年剣士と、薩摩の大将の過去が交錯する物語。戦いに破れせめてこどもたちを守ろうとする会津の武士たちを見て薩摩の部隊の大将は己のために自分の赤子を殺したという過去を思い出す。そして少年と大将は対峙し・・・。動乱の二本松を舞台に様々な人間の感情が描かれています。
「とどかぬ刃」
これは悲恋ものというべきか。幕末の京都。人斬りを行う幕府の狗である青年はある商人の娘と恋仲であった。娘の親に反対され幕府側には縛られる中、幕府から娘の親を斬るように言われる。最後のどんでん返しな展開でうまくまとめられているなと感じました。
「神の棲む山」
これだけちょっと舞台が違う?流しの青年は山に棲む龍をめぐりにぎわう村に立ち寄る。そして青年はその山で一人の女性剣士と出会う。青年は死に場所を探していると女性に打ち明け女性は彼女の秘密を語る。うーんうまく説明できない;長寿を約束するという龍をめぐるお話。御伽噺と人間の業を含んだ話というべきか。どちらかというと泥臭くないスタイリッシュな構成。
石川雅之
ヤングキングコミックス全1巻 / 少年画報社
ジャンル:青年・時代 / 好み度:★★★★★おすすめ
けっこう前に出版されたし感想を書く時期を逸したなあと思っていたら龍馬ブームでタイムリーになっていた。
2012年に少年画報社から再販。