交通事故の影響から右手の接触による他者の思考が読めるようになった女性が関わる人間ドラマサスペンス。
過去家族と同乗していた車が交通事故にあい、以来いわゆる接触テレパスになってしまった女性の物語。右手が直接他者に触れるとその人間の思考や感情が読めてしまうということで右手だけ手袋をすることが常になった主人公。
しかしとあるきっかけで右手に触れてしまった女性の思考が流れ込む。それはある男性への殺意だった。
そんなエピソードから始まる連作シリーズ。人の感情が見えることがきっかけで展開されるサスペンス。濃く深い人間ドラマというよりミステリサスペンスの色合いのほうが濃い内容かな。
最初に物語の肝であり主人公の特殊な設定を早々に描写し、当の主人公はその能力にある程度慣れている状況で、主人公がその能力に振り回されることなく、偶然知ってしまった他者のドラマに主人公が介入するという構成。穏やかで丁寧、落ち着いた感のある口調なせいか、切羽詰った感がなく物語をじっくりと楽しめました。
主人公は語り手のような役割ですがある青年の登場で主人公自身のドラマもそれなりに進んでいくところも良かったです。なんとはなしに著者のまっすぐな気質をうかがわせるタイトルだなと感じました。
山内規子
DSITOコミックスCRシリーズ2巻 / 大都社
ジャンル:女性・ミステリ / 好み度:★★★★☆